ドアによりかかりながら、目の前でやはり同じようにドアにもたれかかる男性をふと見ると、シリコンオーディオプレイヤーらしきものを付けていた。
なぜかそれを見たときに、村田和人というアーティストの「一本の音楽」という曲を思い出した。
君の好きな歌を いつもポケットに入れて
一本の音楽が 僕の旅のパスポート
この曲、僕の記憶が正しければ、確かマクセルのカセットテープのCMソングに使われていた曲だ。かれこれ20年近く前の曲になるのではないだろうか。
そう、「一本の音楽」とは、「一本」のカセットテープに入れられた音楽ということ。
「一枚」でもなく、ましてや「一台」でもなく、「一本」だったのだ。その頃は。
別に、あの頃がよかったという気はない。
僕自身、iPodを使っているけれど、「一枚」や「一本」などでは到底入りきらない曲をポケットに入れられる、気分に応じて曲を選ぶことができる、シャッフル機能で思いも寄らない曲を聞くことができる。そんな今までにない音楽の楽しみ方を、iPodには教えてもらったと思っている。少なくともカセットテープには戻れないと思う。
ただ、今の若い人が、いやむしろ、これから音楽を楽しむようになる次の世代が、もしこの曲を聞く機会があったとしても、「一本の音楽」というフレーズを聞いたときに、いったい何を想像するんだろうか。そんなことをふと考えてしまった。
そうしているうちに、電車は、僕の降りる駅に着いていた。
村田和人 コンプリートEPコレクション 〜MOON YEARS〜村田和人







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