まだシンビン(一時退場)や、選手の入れ替えなんかがなかったころの話。私が高校でラグビーをやっていたころの話です。
それは、私が高校二年生の時の、秋の大会。正月の全国高校ラグビーの東京予選の、一回戦でのことでした。
当時、私のポジションはスクラムハーフ。どちらかというとやせていて、身長も高くなかったことから、入部当時に先輩に言い渡されたポジションでありました。(今では見るも無惨な体になってしまいましたが…(T_T))
私の通っていた某都立高校は、どちらかと言えば進学校で、クラブ活動も盛んではあったのですが、多くの三年生が受験勉強のために、春の大会で引退をするという学校でした。なので、多くの二年生部員が、この秋の大会でデビュー(もちろん、その前にレギュラーになる奴もいましたけど)となります。しかし、スクラムハーフをやっていたひとつ上の先輩は、この秋の大会までやってから引退したいということで、正スクラムハーフはその先輩、そして私はリザーブで19番でした。
その試合、相手は特に強豪ということでもなく、勝てる可能性も十分にあった試合でした。少なくとも私たちはそう考えていました。しかし、前半を相手チームの僅差のリード(確か、ワントライ程度の差)で折り返し、後半に入ってもなかなか得点をあげられない、そんな展開だったと思います。
後半の半ば過ぎくらい、自陣の22mラインを少し出たところくらいだったでしょうか。相手ゴールに向かって右側で相手チームがペナルティーを犯しました。
その時、そのスクラムハーフの先輩が、すぐにボールをちょん蹴りして速攻に出ました。
すると、レフリーの笛が。
「ポイントオーバー」とレフリー。レフリーが指示したペナルティーの位置より前からプレーを始めたと言う反則を取られてしまったのです。
レフリーから相手ボールのスクラムの指示が出ました。
なかなか点が取れず、いらいらしていたことは確かでしょう。また、せっかく「いける!」と思ったプレーを止められたということも、そのいらだちに火をつけてしまったのかもしれません。その先輩がレフリーにこう言いました。
「(ペナルティーの位置は)ここだって言ったじゃないですか!」
その声は、反対側のタッチラインの外にいた私のところまで聞こえてきました。
レフリーは再び笛を吹き、そして言いました。
「退場!」
レフリーに抗議したということで、一発退場。
一瞬、なぜか「先輩の代わりに出なきゃ…」という考えがよぎり、すぐにその考えが間違いであることに気がつきました。「退場」では、代わりの選手は入れないのです。そして、当時は怪我でプレー続行が不可能という場合以外では、選手の入れ替えもできませんでした。
その先輩は、タッチラインを出たところで、膝をかかえたまま泣いていました。
私は、側によることもできず、試合をながめながら、「試合に出られないんだなぁ…」ということをぼんやりと考えていた、そんな気がします。
試合には負けてしまいました。
試合終了後、私も泣きました。
別にその先輩に恨みを言うつもりもありませんし、レフリーが厳しすぎなんじゃないという文句を言うつもりもありません。
ただ、ふとした時に、なぜかこの時のことを思い出すんですよね……。
※ 特に意味があってこの話を書いたわけではありません。なんとなく思い出したので書いてみました。